dalle’s blog

大体音楽と馬と個人的な記憶の記録にシフトしていくようにしています

毒殺チューニング

おおよそ2週間くらい前から体重が増えるまま、全く減らなくなった。食べる量を減らして飲む水も減らしているのにどんどん体重が増えていく。泣きそうになりながら毎朝晩体重計に乗って、また次の計量までの間を鬱々として過ごす、という日々を繰り返した。めまいもひどいし、柔らかな頭痛も継続している。体のコンディションは最悪で、食い込んだ指輪が「新婚」という事実をかき消しているようで悲しかった。

時同じくして定期検診のために産婦人科に行った。この産婦人科は前の医院が閉院したために最近行き始めたところで、前院から引き続き、漢方を処方してもらっていた。ただ、あまりにも漢方を飲み続けている期間が長いため、肝臓への負担を検査するために血液検査をしましょう、と提案された。
この漢方を飲み始めた時の理由は、体に熱がこもってふらついたり体調が悪くなることが日常になってしまったためで、飲み始めた時は確かに調子が良かったし、体重が落ちた。気血がまわり、いらない水分が抜けていったのだと思いながら、また体重が増えることが怖く、飲み続けていたものだった。

血液検査を受け、結果を受ける前だったが漢方を飲むのをやめてみた。ネットで調べると、肝臓への負担で様々な影響が出ると書いてあり、自分に当てはまる項目が多かった。飲むのをやめると、1日、1日と頭痛が軽くなり、併せて飲んだスポーツ飲料のおかげか、トイレの回数が劇的に増えた。体が軽くなり、物理的な体重も日々減ってきている。結果が出る前に自己判断で投薬を止めるのは良くないものの、心底安心できた。私は食べ過ぎでもなんでもなかった。

ここまでであればよかったよかった、で済んだのだけれど、私は並行して「自傷行為」についての本を読んでいた。その中に、過食・拒食の項があり、日々体重に気分を振り回され、運動や食事制限の他に、下剤を服薬して痩せようとすることに対する言及があった。
これを読んで、私の体を取り巻いていた本当の意味での「贅肉」が一気に氷解した。私は正しくこれだった。最近だけでなく、大人になってからずっと体重計に気分を振り回され、食べるものを制限し、時に体重の減りが悪い時は下剤を飲んだ。歌が好きだから吐き戻しはしなかった。喉が胃酸で荒れるのが怖かった。漢方を飲んだら痩せた。運動はずっとしていたので、これを続けた。私は手段を選びながら、痩せることに執着した自傷行為をしているのとおなじだったのだ。
緩やかに、15年くらい、それが健康を手に入れる術と表向きの理由を自分につけて、飲まなくて良い漢方を飲み、無理に運動をし、体内に下剤を入れた。これは明らかに悪質な、チューニングをしながら自分を毒殺せんとする行動だった。

私が痩せることに執着し始めたのは、様々な理由があれど、はっきりと覚えている出来事が3つある。その3つは、全て人に言われたことだった。
「あれ?太った?」「妊婦さんみたい!」「あなたは歌うなら痩せないと」「妹は華奢でかわいいのにね」
全部私を殺すための呪文だった。正確に言えば、放たれた言葉はただの呪文であって、「殺すための呪文」にしたのは私だった。

だけど、はっきりと言いたい。やっぱり、他人に対して、特に10代20代くらいの人間に対して体型のことなんて言うべきじゃない。体型以外にも、外見のことを言及すべきじゃない。それは年代に関係なくそうなんだけど、若いと視野が狭いために、その価値観が自分の心をいとも簡単に蝕んでしまう。首を閉めているのは真綿ではなく、多分トラロープ。痛くて苦しいけど、SOSを発した色を考えると、とても悲しい。そんな人、作りたくない。私もそうなりたくない。

体型のことを気にしている子がいたら、みんなに言いたい。あなたはもっと気にすべきことがあるし、もっと未来を考えるためにそのエネルギーを使うことができる。それを、他人の呪文なんかに屈しないで欲しい。


1週間経ってスムーズに付け外しができるようになった指輪が、私の「余裕」を教えてくれた。