dalle’s blog

大体音楽と馬と個人的な記憶の記録にシフトしていくようにしています

あやこちゃんのワルツ

小学校高学年の頃あやこちゃんという友達がいた。

私は子供時代すごくイケてなくて、友達もいなくて、なんならいじめられてて、なんであやこちゃんと過ごす時間があったのかまったく覚えてない。
しかもあやこちゃんはすごく頭がいいし、すごく顔立ちが整っていて、すごく笑顔が素敵で、やっぱりどうしたって、今思い出してもなんで彼女が私に話しかけてくれたのか、全く見当がつかない。

あやこちゃんには勉強も良く教えてもらったし、彼女の家までの道筋を覚えている気がするから、おうちにもお邪魔したんだと思う。団地の中をずっと駆け巡っている片側1車線ずつを道なりに、坂を少し登って右に曲がったところ。少し木々が山肌からむき出しになっているあそこまでの風景をよく覚えている。

あやこちゃんは頭がいいどころかピアノが弾けた。クラスに必ずいる「合唱コンクールでピアノを弾く子」だった。
そんなあやこちゃんに「子犬のワルツ」を弾いてもらった記憶がある。
どうして弾いてもらったのか、どこで弾いてもらったのかはっきり覚えていないけど、子犬のワルツを弾いてもらったことだけ鮮明に覚えている。
あやこちゃんのことだから、他になんだって弾けただろうし、なにか弾いてくれたはずだと思う。ベタな感じに堪えかねて、あのはにかんだ笑顔とまなざしで「猫ふんじゃった」もきっと弾いてくれていたはずだと。

ほんとうは私がその曲を「子犬のワルツ」だと知ったのは随分大きくなってからで、もう大人になりかけてたかもしれない。
ただ、また出会えたはずのワルツはなんだかとっても早くって、さっと心の中を触れて行ったきり、曲名と曲があるという事実だけ私に告げてどこかへ踊りながら去ってしまった。
私の心の中にはあやこちゃんが弾いてくれたあの曲が「子犬のワルツ」で、それは正しいだけは上書きされたりしないんだと知った。

私はもともとピアノの音楽も3拍子も好きだから覚えていたんだろうなって感じながら、いろんな人の子犬のワルツを聞いてみて、でもやっぱりあやこちゃんの弾いてくれたのが一番好きだなって思う。
スピードもゆったりだし、きっとほかに上手な人もいるのだろうけど、私が頭の中で聞いてる「子犬のワルツ」はあやこちゃんが弾いてくれたものだけ。

私が好きなのはあやこちゃんのワルツ。